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特集 | 住宅ローン

2024/01/29

住宅ローン控除はいつまで受けられるのか|税制改正での変更点も紹介

執筆者:新井智美(ファイナンシャルプランナー)

住宅ローンを利用した人に対し、一定の要件を満たすことで税額控除が受けられる「住宅ローン控除」の制度は、当初2021年をもって終了する予定でした。しかし、その後の税制改正により、利用できる期間が2025年まで延長されることになっています。

この記事では、住宅ローン控除の概要と、利用できる期間、そして今後予定されている制度改正の内容について紹介します。

現在住宅ローン控除の適用を受けている人や、これから住宅ローンを利用した住宅の購入を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

  • 本記事の情報は2023年12月29日時点のものです

■住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、自分が住むための家を購入し、その際に住宅ローンを利用している場合、要件を満たせば年末の借入残高に応じて計算された額を所得税額および住民税額から控除できる制度です。

本来は控除期間が10年間、控除額は年末時点の借入残高の1%でしたが、2021年の入居から控除期間が13年間に延び、さらに入居時期が2022年1月1日以降の場合は控除額が借入残高の0.7%となりました。

控除期間について、住宅ローン控除の期間が10年から13年になったのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって後退した景気を回復させるという目的があります。

また、控除率が1%から0.7%に下がった背景には、近年の低金利下により住宅ローンの金利が1%を下回るケースが多く、1%の控除率では利息の額よりも控除額の方が大きくなる、「逆ざや」現象を回避する目的が挙げられます。

■2023年の住宅ローン控除の内容

2023年の住宅ローン控除の内容については、住宅の環境性能、入居時期による借入限度額、控除期間が異なる点が特徴です。

それぞれ以下のとおりとなっています。また、新築住宅と既存住宅では借入限度額や控除期間が異なる点にも注意しておきましょう。

(新築住宅もしくは買取再販住宅)*1

住宅の環境性能 入居時期における借入限度額 控除期間
2022年・2023年 2024年・2025年

長期優良住宅・低炭素住宅

5,000万円

4,500万円

13年間

ZEH水準省エネ住宅

4,500万円

3,500万円

省エネ基準適合住宅

4,000万円

3,000万円

その他の住宅

3,000万円

0円

  • *1 宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋。

その他の住宅とは、省エネ基準を満たさない住宅のことで、2024年以降に新築として建築確認を受けたものについては、住宅ローン控除の対象外になります。
また、2023年末までに新築として建築確認を受けた住宅に、2024年および2025年に居住する場合は、借入限度額が2,000万円、控除期間は10年になります。

(中古住宅)

住宅の環境性能 入居時期における借入限度額 控除期間
2022年・2023年 2024年・2025年

長期優良住宅・低炭素住宅

3,000万円

10年間

ZEH水準省エネ住宅

省エネ基準適合住宅

その他の住宅

2,000万円

■住宅ローン控除の適用を受けるには?

住宅ローン控除の摘要を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 購入する住宅が、自分が居住する住宅であること
  • 購入する住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつそのうちの2分の1以上が居住用であること
  • 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 借入れている住宅ローンが、10年以上の借入期間であること
  • 住宅の引き渡しおよび工事の完了から6ヵ月以内に入居していること
  • 現行の耐震基準を満たしていること

また、2023年末までに建築確認を受けた新築の住宅を購入する場合、その年の合計所得金額が1,000万円以下の人に限り、床面積の要件が40平方メートル以上に緩和されます。

■控除額の計算方法

控除額の計算方法はいたってシンプルで、その年の年末の借入残高に0.7%を乗じた額です。
上で紹介した要件を全て満たし、長期優良住宅を購入している場合で、年末の借入残高が2,300万円だった場合、「2,300万円×0.7%」=16万1,000円がその年の所得税額から減額されます。

具体的に以下のケースで計算してみましょう。

  • 年収600万円(給与収入)
  • 妻は専業主婦で中学生の子どもが1人
  • 配偶者控除および基礎控除以外の控除はなし
  • 社会保険料控除額は年収の15%として計算

まず、給与収入の場合、収入から給与所得控除額が差し引かれます。年収600万円の給与所得控除額は164万円ですので、600万円から164万円を差し引いた436万円が給与所得金額です。
そしてこれからさらに社会保険料控除(600万円×15%=90万円)、配偶者控除(38万円)、基礎控除(48万円を引くと、36万円-(90万円+38万円+48万円)=260万円となり、これが課税所得金額になります。

260万円の課税所得金額に対する所得税額は、16万2,500円ですので、ここから住宅ローン控除額(16万1,000円)控除され、最終的な所得税額は1,500円になります。

●住民税からの控除

ただし、年収やその年の年末の借入残高によっては所得税から全額差し引けない可能性もあります。

例えば上のケースで、年末の借入残高が3,000万円だった場合を考えてみましょう。年末の借入残高が3,000万円だった場合、その年の住宅ローン控除額は21万円です。

しかし、所得税額は16万2,500円ですので、住宅ローン控除額を所得税額から差し引いても4万7,500円残ってしまいます。

その場合は、住民税から控除できますが、控除できる上限が決められている点に注意しましょう。住民税から控除できる額の上限は以下の2つのうち少ない金額です。

  • 所得税額から差し引けなかった金額
  • 課税所得金額(所得税)の5%(ただし9万7,500円が上限)

そのため、上のケースで差し引けなかった金額全額の4万7,500円が、翌年の住民税額から差し引かれることになります。

年末の借入金額によっては住民税から差し引いてもさらに残ってしまうケースもありますが、その部分については控除対象とはならず、翌年への繰り越しもできません。

■2024年以降の住宅ローン控除の内容

2024年以降に建築確認を受けた新築住宅について、住宅ローン控除の適用を受けるためには省エネ性能が必須になります。省エネ基準に該当しない住宅は「その他の住宅」に区分され、住宅ローン控除の適用を受けられせん。ただし2023年末までに建築確認を受けた新築住宅については、借入限度額2,000万円までの住宅ローン控除を受けられます。

●変更された背景

この制度改正の背景には環境に対する配慮がうかがえます。実際、2024年以降に住宅ローン控除の適用を受けるには、

  • 建設住宅性能評価書
  • 住宅省エネルギー性能証明書

のいずれかを提出しなければなりません。

提出する証明書が指定されている点に注意しましょう。

●借入限度額

また、2024年以降の入居からは、借入限度額が下がる点にも注意が必要です。

借入限度額は住宅の性能によって決められていましたが、2024年からは長期優良住宅・低炭素住宅については4,500万円、ZEH水準省エネ住宅については3,500万円、省エネ基準適合住宅については3,000万円まで減額されます。

最近では物件価格も上昇しており、借入金額も大きくなることが予想されます。住宅ローン控除で適用される借入限度額を把握し、できるだけ自己資金を用意しておくなど対策を取っておきましょう。

●子育て世帯に向けた新たな支援が登場

ただ、2023年12月14日に発表された「令和6年度税制改正大綱」では、子育て世帯に向けた新たな支援策が設けられることになりました。

具体的な内容は、19歳未満の子どもがいる子育て世帯および夫婦のどちらかが40歳未満の世帯に限り、2024年から適用される借入限度額の減少をなしとし、2023年の額のまま適用するというものです。現時点では2024年だけの適用となっていますが、2025年も同様の措置がとられるよう検討が進められています。

また、借入限度額は新築住宅と中古住宅で金額が異なっていましたが、これについては2024年以降も変更はありません。

■住宅ローン控除を受ける際の注意点

住宅ローン控除の適用を受けるにあたり、最初の1年目は必ず確定申告を行わなければなりません。その際には確定申告書と、以下の書類も合わせて提出する必要がありますので、事前に準備しておきましょう。

  • 源泉徴収票
  • ・住宅借入金等特別控除額の計算明細書(税務署にて入手)
  • 住宅ローン借入金の年末残高等証明書(住宅ローンを借りている金融機関から入手)
  • 登記簿謄本(法務局にて入手)
  • 不動産売買契約書(工事が発生する場合は工事請負契約書も必要)
  • 本人確認書類

会社員であれば、2年目以降は「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「住宅ローン借入金の年末残高等証明書」を用意することで、年末調整で行えます。

●対象となる住宅ローンが10年以上にわたって返済するものでなければならない(繰上返済時は特に注意)

住宅ローンの返済中にまとまった収入があった場合、繰上返済を考える人もいるでしょう。住宅ローン控除の適用を受けるためには、繰上返済後、当初の契約により定められていた最初に返済した月から、短くなった償還期間の最終の返済月までの期間が10年以上であれば、住宅ローン控除を受けることができますが、10年未満となるときは、住宅ローン控除は受けられません。

住宅ローン控除適用期間中に繰上返済を行う際には、事前にシミュレーションを行い、返済後の借入期間を確認するようにしましょう。

●ほかの控除との関係性は?

住宅ローン控除はふるさと納税や医療費控除との併用が可能です。

ふるさと納税を行った際には、原則として確定申告で申請しなければなりませんが、以下の要件に当てはまればワンストップ特例制度が利用でき、確定申告の手間が省けます。

  • 確定申告の必要がない給与所得者(医療費控除の適用を受ける人は対象外)
  • 寄附先の自治体の数が5つ以下

確定申告でふるさと納税の寄附金控除を申請する場合、所得税では所得控除の対象になります。そのため、所得税を計算するうえでの課税所得金額が減り、住宅ローン控除を全額差し引けないケースが発生する可能性があります。

さらに所得税から差し引けなかった金額については住民税額からの控除になるため、ふるさと納税の控除上限額が少なくなる可能性がある点にも注意しておきましょう。

■まとめ

住宅ローン控除の内容は、毎年の税制改正で少しずつ変わっています。現状では省エネ住宅に該当すれば13年間の控除が受けられますが、今後の見直しによっては10年に戻る可能性も否定できません。

特に2024年からは省エネ住宅でなければ対象にならないことや、子育て支援による優遇策が設けられた点は大きな改正と言えるでしょう。

今後の市場の動向や、景気の動きによってはさらに内容が変わる可能性もありますので、今後の制度改正の動きに注目しておく必要がありそうです。

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