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特集 | 住宅ローン

2022/11/4

住宅ローンの「繰上返済」とは?種類やシミュレーションの重要性を解説

監修者:新井 智美

住宅ローンの借入れを行うと、長期間にわたって契約で決められた返済日に返済を行いますが、毎月の返済額に加えて「繰上返済」を行うことも可能です。

本記事では、繰上返済の種類や、繰上返済と住宅ローン減税(控除)のどちらを優先すべきかを判断するために、返済シミュレーションの重要性を徹底解説します。

繰上返済に適したタイミングや、繰上返済を行う際に注意すべき点も紹介するので、参考にしてください。

住宅ローンの「繰上返済」とは

「繰上返済」とは、毎月の約定返済額(契約で決められた毎月の返済額)とは別に、借入残高(元金部分)の一部または全部を前倒して返済することです。

前倒しで返済すると、当初の予定よりも早く完済できる、借入残高が小さくなることで、将来に支払う利息を減らせるメリットを享受できます。資金に余裕がある場合は、繰上返済を検討してはいかがでしょうか。

住宅ローンの繰上返済の種類

住宅ローンの借入残高の一部を繰上返済する方法は、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類に分けられます。それぞれの特徴を理解し、ご自身に適した方法を選択しましょう。

期間短縮型

期間短縮型は、毎月の返済額は変えずに、残りの返済期間を短縮するタイプです。

「毎月の返済額は現状のままで良いので、定年退職を迎える前に、早く住宅ローンを完済したい」方には、期間短縮型の繰上返済をおすすめします。

同じ額を繰上返済するなら、期間短縮型の方が利息削減効果は大きいことも覚えておきましょう。

返済額軽減型

返済額軽減型は、残りの返済期間は変えずに、毎月の返済額を減らすタイプです。

「完済までに要する期間は現状のままで良いので、毎月の負担を軽減したい」方は、返済額軽減型の繰上返済を実行してはいかがでしょうか。

住宅ローン減税(控除)と繰上返済、優先するのはどちらにするべき?

住宅ローンの借入れを行う際は、「繰上返済」だけではなく、「住宅ローン減税(控除)」の活用もご検討ください。

どちらを優先するべきなのかは、年末時点の借入残高および適用金利によって異なります。

あらかじめ「住宅ローン減税(控除)を利用した際に得られるメリット」と「繰上返済を実行した際に得られるメリット」の試算を行って、比較と検討を行いましょう。

以下では、「住宅ローン減税(控除)がどういった制度なのか」を詳しく説明したうえで、住宅ローン減税(控除)および繰上返済のシミュレーションを行った結果も紹介します。

「住宅ローン減税(控除)」とは

「住宅ローン減税(控除)」とは、住宅ローン残高に応じて所得税や住民税の控除を受けられる仕組みであり、正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。

「無理のない負担で、居住ニーズに応じた住宅を確保できるようにすること」を目的とした制度で、住宅ローンの借入れを行って住宅の新築、取得、増改築などをし、一定の要件を満たす場合、最大13年間、年末のローン残高の0.7%分が所得税額から控除されます(所得税から控除しきれない部分については、翌年の住民税から控除)。

次節以降で、「住宅ローン減税(控除)を利用した場合の効果」と「繰上返済を実行した場合の効果」をシミュレーションした結果を紹介するので、参考にしてください。

住宅ローン減税(控除)を利用した場合のシミュレーション

以下に示す内容の住宅ローンの借入れを行って、12ヶ月が経過するタイミングと年度末が一致するケースを想定しましょう。

  • 借入元金:2,000万円
  • 借入期間:20年
  • 返済方法:元利均等返済
  • 金利:年2.0%
  • ボーナス返済なし

「1年目」「5年目」「10年目」の各年末の借入残高、および、住宅ローン減税(控除)額は下表のようになります。

借入れを行ってからの年数 年末の借入残高 住宅ローン減税(控除)額 年末時点の総支払利息
1年目 19,178,379円 約134,200円 392,491円
5年目 15,722,669円 約110,000円 1,793,229円
10年目 10,995,879円 約76,900円 3,136,999円
  • 年末の借入残高および年末時点の総支払利息は「auじぶん銀行 住宅ローンシミュレーション」を用いて試算しています。実際の事例を示すものではございません。
  • 住宅ローン減税(控除)額は年末の借入残高に0.7%を乗じて算出しており、あくまでも目安です。実際の控除事例を示すものではございません。

繰上返済を実行した場合のシミュレーション

「前節と同じ条件で住宅ローンの借入れを行い、4年が経過した時点で300万円の繰上返済を実行したケース」を考えてみましょう。

「5年目」「10年目」の各年末の借入残高、および、住宅ローン減税(控除)額は下表のようになります(1年目に関しては、繰上返済を行う前なので、前節の表の内容と同じ)。

借入れを行ってからの年数 繰上返済のタイプ 年末の借入残高 住宅ローン減税(控除)額 年末時点の総支払利息
5年目 期間短縮型 12,657,016円 約88,500円 1,727,576円
返済額軽減型 12,895,862円 約90,200円 1,729,952円
10年目 期間短縮型 7,608,090円 約53,200円 2,749,210円
返済額軽減型 9,018,865円 約63,100円 2,832,115円
  • 年末の借入残高および年末時点の総支払利息は「auじぶん銀行 住宅ローンシミュレーション」を用いて試算しています。実際の事例を示すものではございません。
  • 住宅ローン減税(控除)額は年末の借入残高に0.7%を乗じて算出しており、あくまでも目安です。実際の控除事例を示すものではございません。

以上のように、繰上返済による効果は、「期間短縮型なのか、返済額軽減型なのか」、また、「いつ繰上返済を行うか」などによって異なります。

繰上返済を行うのに適したタイミングとは?

住宅ローン減税(控除)の適用期間中に繰上返済を行うと、住宅ローン残高が小さくなるため、控除額が減少します。どちらを優先するべきなのかは、ほぼ住宅ローンの「金利」によって決まると認識しておきましょう。

控除の適用期間が終了してから繰上返済を行うほうが有利なケースも、さきに繰上返済を実行するほうが有利なケースもあります。例えば、上掲のシミュレーションでは、住宅ローン控除で戻ってくる金額の差分よりも、繰上返済により軽減された利息の方が多いことが分かります。このように「金利が高い場合は、繰上返済を優先したほうが良い」と覚えておきましょう。

なお、繰上返済では、上掲の表に示した金額に乗じた利息分だけ確実に軽減されますが、住宅ローン減税(控除)では、所得が少ない年度は所得税および住民税から控除しきれません。

現時点での収入が低い方に関しては、「金利が低くても、繰上返済を優先したほうが良い」可能性もあるので、個別に検討する必要があります。

住宅ローン減税(控除)の利用や繰上返済の実行をする前に、まずは金融機関にご相談ください。

住宅ローンの繰上返済を行う際に注意すべき点

では、住宅ローンの繰上返済を行う際に注意すべき点を3つ紹介します。

繰上返済の手続きを行う際に「手数料」がかかるケースがある

金融機関によっては、繰上返済の手続きを行う際に「手数料」がかかるケースがある点にご注意ください。

なお、「インターネットでの手続きなのか、窓口や電話での手続きなのか」や「一部繰上返済なのか、全部繰上返済なのか」「変動金利適用中なのか、固定金利適用中なのか」によって手数料が変わる場合もあるので、各金融機関のウェブサイトを確認しましょう。

万が一の場合は団体信用生命保険で住宅ローン残高が保障される

契約者に万が一のこと(病気など)があった場合、住宅ローンの借入れを行う際に加入する「団体信用生命保険」によって借入残高がゼロになります。そのため、繰上返済をして計画的に借入残高を減らしても、万が一の際は団信で借入残高が保障されると覚えておきましょう。

昨今、「死亡」や「高度障害」に加えて「がん診断」や「疾病保障」などが付いた団体信用生命保険が登場しています。「遺族に住宅を遺す」目的だけではなく、契約者自身が病気の克服後の人生を有意義に過ごすことも可能です。

現時点で「自分は絶対に病気にならない」と思っていても、将来的に大病を患う可能性を完全に否定はできません。

無理な繰上返済を行うと、家計が圧迫される

繰上返済を行う際は、現預金を取り崩すケースもあれば、毎日の支出を極力抑えて捻出するケースもあるでしょう。

いずれのケースでも、余裕のない状態で無理に繰上返済のための資金に充当してしまうと、本来やりたかったこと(新しい家電製品の購入、旅行、習いごとなど)を断念せざるを得なくなるかもしれません。

また、「結婚資金」「子どもの教育資金」「車の購入資金」「老後資金」など、住宅ローンの支払い以外にも、蓄えておくべき資金がある点にもご注意ください。特に私立学校への進学には、多額の資金が必要です。資金作りに回す余裕を確保したうえの余剰資金で繰上返済を行いましょう。

人生は、住宅ローンを支払うために送るものではないので、繰上返済は、無理のない金額で行うことをおすすめします。

住宅ローン減税(控除)や繰上返済に関する悩みは金融機関に相談を

住宅ローンの返済は長期にわたるもので、金額も大きいので、住宅ローン減税(控除)の利用や繰上返済を実行する前に、ライフプランの設計や見直しが欠かせません。

基本的には、借入金利が高い場合は、住宅ローン減税(控除)の利用があっても、繰上返済を実行するほうが良いでしょう。
また、所得が少ない場合は、所得税や住民税から控除しきれないケースもあるので、個別に検討が必要です。

なお、繰上返済の実行に手数料がかかる場合がある点や、契約者に万が一の事態があった場合に団体信用生命保険によって住宅ローン残高がゼロになる点、無理に返済を行うと家計が圧迫される点を認識しておきましょう。

金融機関のウェブサイトなどで、住宅ローン減税(控除)や繰上返済に関するシミュレーションを行うことが可能ですが、試算結果(控除額、減少する利息額など)を解釈し、「どうするのがベストなのか」を判断するのは容易なことではありません。

すでに住宅ローンを借入れしており「住宅ローン減税(控除)制度や繰上返済の仕組みを活用しよう」と考えている方は、契約している金融機関に相談するのもいいでしょう。ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談して、アドバイスをもらうことも有用です。

また、住宅ローンの借換えを視野に入れることも選択肢のひとつです。借換えを行うことで金利が下がり、総返済額などが減るケースもあるので、検討してください。

監修者:新井 智美
顔写真:監修者:新井 智美

プロフィール:
コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績 は2,000本を超える。

資格情報:CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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繰上返済のシミュレーションをしてみましょう

繰上返済を検討する際はシミュレーションが大切であることが分かりました。さまざまなパターンを想定して、試算をしながらライフプランの設計などの一助にしてください。

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