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元利均等返済と元金均等返済の違いについて

執筆者:佐藤名ゝ美(ファイナンシャルコーチ)

2020年12月10日

住宅ローンを検討するなかで気になるポイントは、「金利」「手数料」「団信の内容」「返済年数」「ボーナス返済はどうするか」など、挙げればきりがありません。そのなかでも、知っておきたいのが返済方式。「元利均等(ガンリキントウ)返済方式」と「元金均等(ガンキンキントウ)返済方式」の2種類があります。それぞれの特徴と違いについて解説します。

住宅ローンには主に2つの返済方法がある

返済方式の違いの話の前に、ローン返済の基礎を知りましょう。一般的に、返済額は口座から引き落とされる額を指し、「月々〇万円の返済」のような言い方をしています。実はこの表現、誤りとは言わないまでも100%正確なものではありません。なぜならば、この場合の「〇万円」の内訳には、「元金の返済に充てられる部分」と「利息の支払いに充てられる部分」の両方が含まれているからです。つまり、返済できているのは「〇万円」より必ず少ない金額なのです。この点を踏まえ、「元利均等返済方式」「元金均等返済方式」の違いを把握しましょう。

「元利均等返済」とは、「元金の返済額(=元)と利息の支払額(=利)との合計額(=元利)が、毎回一定(=均等)となる返済方式」です。簡単に言うと、口座から引き落とされる金額が毎月同じになる方法です。

「元金均等返済」は、元金の返済に充てる金額を毎回一定とする返済方式です。残高に対して発生する利息額が加算され、その合計額が口座から引き落とされます。ローン返済時に毎回負担する利息額は、残高が多い返済開始初期ほど高額で、返済が進んで残高が減るにつれて徐々に軽減されていきます。つまり、返済が進むにつれて口座からの引き落とし額も徐々に減っていくことになります。

基本的には、契約時に返済方式を選択できますが、多くの方が「元利均等返済方式」を選択しています。

元利均等返済と元金均等返済の返し方・減り方の違い

具体的な数字を挙げ、両者の違いを見ていきましょう。実際の住宅ローンではボーナス併用返済を選択するケースも多いですが、ここでは分かりやすくするため月々の返済のみで試算します。

借入額:3,500万円  金利:1.30%(全期間固定)  返済期間:35年

上記のケースを例に、まずは各返済方式の月々の負担額および支払利息総額を見てみましょう。
☆元利均等返済方式 ⇒ 月々の返済額 103,768円 / 支払利息総額 8,582,673円
☆元金均等返済方式 ⇒ 初回返済額 121,249円 / 支払利息総額 7,981,251円
(毎回返済元金83,333円)

上記のケースでは、「借入額」「金利」「返済期間」は同じでありながら、返済方式の違いで負担する利息の総額に約60万円の差額が生じています。

このように、支払利息総額を比較すると「元利均等返済方式」よりも「元金均等返済方式」の方が負担は軽く済むと言えます。ちなみにこの差額は、金利が高いほど、また借入額が多いほど広がります。どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。返済予定表を照らしながら、もう少し具体的に掘り下げてみます。

元利均等返済方式の返し方・減り方

「元利均等返済方式」は、「月々の口座引き落とし額(=元金と利息の合計額)が一定となる返済方式」です。まず、「月々103,768円という返済額がどこからきているか」ですが、これは設定した条件できれいに完済できるよう公式から割り出された金額です。

では、さっそく第1回返済時の利息から計算してみましょう。あらゆるローンにおいて、利息の支払額は以下の式で計算されます。

(借入残高)×(金利)×(期間)

これを用いると以下の計算となり、返済予定表の②と一致します。
第1回支払利息 = 35,000,000円 × 1.3% × 1ヶ月
= 455,000円 ÷ 12
≒ 37,916円

このとき「÷12」としたのは、金利の表示において、特に断りなく「〇%」と書かれているときは年利、つまり「その利率で1年間お金を借りた場合の利率」を表しているからです。

しかし、ローンの返済は毎月行うもの。その度に前回返済時から経過した期間分の利息を支払うので、「1年のうちの1ヶ月分」という意味で「12で割る」という計算を行うのです。なお、ここでは、説明をシンプルにするために月割りで計算していますが、実際のローン返済においては「365日分の30日」「365日分の28日」といったように日割りで計算されます。特に初回返済日については、例えば「11月15日に融資が実行され12月27日に返済を開始する」など1ヶ月を超えて借りている状態が発生することが多く、このケースであれば42日分の利息が必要となります。よって利息額は「365日分の42日」として計算されます。

次に、第1回で元金の返済に充てられる金額ですが、以下の式で求められます。

(当月返済額)-(うち利息額)

あてはめると以下の計算となりました。
第1回返済元金 = 103,768円(①)- 37,916円(②)
= 65,852円(③)

ここで返済できた金額を、当初の借入額35,000,000円から差し引いた金額が、第1回の返済後残高です。
第1回返済後残高 = 35,000,000円 - 65,852(③)
= 34,934,148(④)

では、第2回の返済の内訳はどうなるでしょう。第1回の返済を行ったことで、ローン残高はもう35,000,000円ではなくなっています。なので利息の計算は、第1回返済後残高に対して行います。
第2回支払利息 = 34,934,148(④)× 1.3% × 1ヶ月
≒ 454,143 ÷ 12
≒ 37,845円(⑥)
第2回返済元金 = 103,768円(⑤)- 37,845円(⑥)
= 65,923円(⑦)
第2回返済後残高 = 34,934,148円(④) - 65,923円(⑦)
= 34,868,225円(⑧)
以降、最終回で残高が0になるまで同様の計算が繰り返されていくのです。

ここで注目したいのは、毎回の利息の支払額は残高が最も高い第1回目がピークであるという点です。そこから、残高が徐々に減るに従って利息の負担が少しずつ減っていきます。そしてその分だけ、元金の返済に充てられる金額が徐々に増えていくのが元利均等返済方式の特徴です。

【元利均等方式返済予定表(単位:円)】

返済回数 当月返済額 うち利息 うち元金 返済後残高
1 ① 103,768 ② 37,916 ③ 65,852 ④ 34,934,148
2 ⑤ 103,768 ⑥ 37,845 ⑦ 65,923 ⑧ 34,868,225
3 103,768 37,773 65,995 34,802,230
4 103,768 37,702 66,066 34,736,164
(中略)
417 103,768 448 103,320 310,745
418 103,768 336 103,432 207,313
419 103,768 224 103,544 103,769
420 103,881 112 103,769 0
合計 43,582,673 8,582,673 35,000,000

元金均等返済方式の返し方・減り方

「元金均等返済方式」は、「月々の返済に充てられる元金の金額が一定となる返済方式」です。借入総額を返済期間で割ることで、毎回の元金返済額を算出できます。

毎回の元金返済額 = 35,000,000円 ÷ 35年 ÷ 12ヶ月
≒ 83,333円

この方法では、ローン残高は毎月83,333円ずつ着々と減っていくことになります(端数分は最終回に加算)。

次に利息の計算ですが、ここでも以下の式で計算されることは、元利均等返済方式の場合と同様です。

(借入残高)×(金利)×(期間)

第1回目支払利息 = 35,000,000円 × 1.3% × 1ヶ月
= 455,000円 ÷ 12
≒ 37,916円(②)

よって、第1回目の返済にあたり口座から引き落とされる金額は、以下のようになります。
第1回返済額 = 83,333円(③)+37,916円(②)
= 121,249円(①)

このとき、返済後残高は以下の通りです。
第1回返済後残高 = 35,000,000円 - 83,333円(③)
= 34,916,667円 (④)

引き続き第2回の利息支払額と返済額を計算してみましょう。
第2回支払利息 = 34,916,667円(④)× 1.3% × 1ヶ月
≒ 453,916円÷12
≒ 37,826円(⑥)
第2回返済額 =83,333円(⑦)+37,826円(⑥)
=121,159円(⑤)
第2回返済後残高 =34,916,667円(④)- 83,333円(⑦)
=34,833,334(⑧)

以降、最終回で残高が0になるまで同様の計算を繰り返していきます。

毎回の利息の支払額について、残高が最も高い第1回目がピークであるという点、残高が減るに従って利息の負担が少しずつ減っていく点は元利均等返済方式と同じです。これを毎回一定額の元金返済分に加算しながら支払うため、残高が減るに従って毎回の返済額も徐々に減っていくのが、元金均等返済の大きな特徴です。

【元金均等方式返済予定表(単位:円)】

返済回数 当月返済額 利息支払額 元金返済額 返済後残高
1 ① 121,249 ② 37,916 ③ 83,333 ④ 34,916,667
2 ⑤ 121,159 ⑥ 37,826 ⑦ 83,333 ⑧ 34,833,334
3 121,069 37,736 83,333 34,750,001
4 120,978 37,645 83,333 34,666,668
(中略)
417 83,694 361 83,333 250,139
418 83,603 270 83,333 166,806
419 83,513 180 83,333 83,473
420 83,563 90 83,473 0
合計 42,981,251 7,981,251 35,000,000

どんな人に向いているの?

返済方式別に、返済の進み方の内訳を確認しました。利息の支払いは常にその時々の残高に対して行いますので、いかにスムーズに残高を減らすことができるかが支払い総額を少なく抑えることに繋がります。両者を比較して元金均等返済の方が利息の負担を抑えられているのは、より大きな残高を抱えている返済初期の段階で元金の返済を多めに実行できているからなのです。

では、なぜ圧倒的多数の方が「元利均等返済方式」を採用しているのでしょうか。どんなものも、見方や立場が変わるとメリット・デメリットとなる点も変わります。違いは単なる違いと捉え、ご自身に合った選択を合理的に行うのが肝心です。それぞれのメリットを見てみましょう。

<「元利均等返済方式」のメリット>

  • 月々の返済額が一定なので計画的に返済できる
  • 開始時点の返済負担を抑えられる

<「元金均等返済」のメリット>

  • 利息支払い総額を抑えられる
  • 返済額が徐々に減っていくため、将来、子どもの教育費が増える時期などに負担を抑えられる

返済開始時の家計にゆとりがある方は、利息支払い総額を抑えられる点から「元金均等返済」に魅力を感じるかもしれません。そんな方に、もう一歩踏み込んで検討していただきたいのは「返済額が徐々に減っていかないと困るのか」という点です。「減っていかなくても払える」という方には、「元利均等返済方式」をお勧めします。初回返済額と同額の返済を続けることで、残高の減少にともない利息が軽減されます。それにつれて元金の返済額を月83,333円からさらに増やしていくことができ、残高の減少スピードは加速、さらに利息の軽減が進みます。

ちなみに、上述の元金均等返済の初回返済額「月々121,249円」に近い金額で返済し続けることを想定すると、「借入額3,500万円、金利1.3%、月々の返済額121,350円」の条件で、28年と10ヶ月で完済できてしまいます。その間の支払利息総額は約699万円で、「元金均等返済35年」のケースより利息はさらに約100万円軽減されます。

また、住宅ローン減税の対象期間にある方は、一般的にローン残高が減るにつれて減税額も少なくなりますので、元金をドンドン減らすことが必ずしもオトクとも言い切れないかもしれません。家計に余裕がある方も、返済当初は元利均等返済で緩やかに返済しながら資金を温存、住宅ローン減税の終了後に一部繰上げ返済を行うことで以降の利息負担の軽減を図ることも有効かと思われます。

住宅ローンをご利用の際は、表面的な数字や教科書的な言葉だけで優劣を決めつけてはいけません。仕組みを理解し、ご自身に合った方法を選択していただきたいと思います。

ライター:佐藤名ゝ美
顔写真:ライター:佐藤名ゝ美

肩書:ファイナンシャルコーチ

プロフィール:
一度きりの人生を豊かに送るために、お金と仲良く付き合う方法を発信。家計管理・マイホーム取得・保障設計・資産形成・金銭教育・終活…など、様々なテーマで個別相談やセミナー、執筆に携わる。2001年より、熊本日日新聞社発行の生活情報紙すぱいす(週刊)にて、マネー情報の連載を担当。現在、『“お金のプロ”がズバリ!家計簿チェック』『知りたい!お金の話』を連載中。

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