[米国雇用統計] なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

9月1日発表「米国雇用統計」

変動結果

発表直後からの10分間は↓円高ドル安に変動!
  • じぶん銀行FX米ドル/円10分足のチャートより抜粋
発表直前 10分後 変動幅
米ドル/円
為替レート
110.012円 109.717円 -0.295円
  • じぶん銀行FXレート
失業率 非農業部門
雇用者数
予想 4.3% +18.0万人
結果 4.4% +15.6万人
乖離 +0.1% -2.4万人
  • 結果は速報値です。

詳しい解説

1. 発表前

8月の米ドル/円相場は、北朝鮮情勢に翻弄される展開となったが、月間を通じ108円台の底堅さが印象づけられた。上旬は日経平均株価の下落と、7月米消費者物価指数が事前予想を下回ったこと等を受け、110円台後半から108円台後半へと下落。しかしながら、15日に米紙が「北朝鮮が米領グアムへのミサイル攻撃を見合わせると決めた」と報じると、再び110円台後半まで上昇した。ところが16日には7月FOMC議事要旨で、インフレ鈍化に対する懸念はFOMC内で広く共有化されていることが示されると、一転108円台半ばまで下落することとなった。その後は109円を挟んで揉み合いが続いたが、29日早朝に、「北朝鮮が発射したミサイルが日本上空を通過」との報道を受け、月間安値となる108円27銭まで下落。しかし同日の東京時間中に米ドル/円は反発に転じると、その後はドル買戻しが一気に強まり、結局110円台前半で指標の発表を迎えることとなった。
事前予想は、「失業率」が4.3%(前月4.3%)、「非農業部門雇用者数」が+180千人(前月+209千人)、「平均時給」が+0.2%(前月+0.3%)であった。

2. 発表直後

8月「失業率」は4.4%へと小幅に上昇。「非農業部門雇用者数」は、事前予想を下回る前月比+156千人(6・7月分は合わせて41千人下方修正)と弱い内容。注目された「平均時給」は、前月比+0.1%と事前予想を下回った。

「失業率」、「非農業部門雇用者数」、「平均時給」、いずれも事前予想を下回り、米ドル/円は発表直後に109円台半ばへ急落。しかしながら、同時に2.1%を割り込んだ米長期金利(10年国債利回り)が同水準で下げ渋り、上昇に転じるのに合わせて米ドル/円も反転して110円台を回復。しばし110円を挟んでの取引となったが、その後発表された米8月ISM(供給管理協会)製造業景況指数が強い内容となり、110円40銭台まで上昇した。

3. NYK Closeまで

指標発表直後の安値から1円弱上昇した水準でドルの買戻しが一巡すると、米ドル/円は徐々に弱含んで日付が変わると110円ちょうどあたりまで下落。予想外に堅調推移となった米株価や、弱い雇用統計にもかかわらず米長期金利が下げなかったこともあり、ニューヨーク時間午後には再び110円30銭程度まで上昇し、110円25銭前後でCloseとなった。米長期金利(10年国債利回り)は2.17%に上昇。ニューヨークダウは21,987ドル(前日比+39ドル)へ上昇して取引終了となった。

4. 「米ドル/円がいったん下落後に上昇したのはなぜ」

  • 発表された内容からは、108円台まで下がっても不思議ではないと思われたが、8月29日早朝の北朝鮮によるミサイル発射報道の際と同様、下値には本邦機関投資家と思しき大口でのドル買い注文が控えていた模様であった。
  • 売り崩しに失敗した短期的なドル売りポジションが、徐々に買戻しを迫られたところに、堅調なISM製造業景況指数の発表を受けて米長期金利(10年国債利回り)が上昇に転じたことで、ドルの下値が一段と固くなったものと考える。

5. 当面の見通し

  • (Ⅰ)9月雇用統計

    8月の雇用統計は事前予想を下回ったものの、悲観するほどの内容ではない。小幅に低下した「失業率」は前月同様、就業率の改善によるものであり、不悪な内容。「非農業部門雇用者数」も3ヶ月平均で見れば185千人程度であり、年初から安定した推移となっている。ただし、注目が集まる賃金データは依然として弱く、来月も上向かないようであれば、追加利上げが遠のく要因となろう。

  • (Ⅱ)米ドル/円動向

    9月3日午後、中国での新興5カ国(BRICS)首脳会議の開幕直前、というタイミングで北朝鮮は6回目の核実験を実施した。これを受け米ドル/円は、週明け4日のオセアニア市場で、前週末比1円以上円高となる109円前半で始まり、日経平均株価の終値は183円安となった。北朝鮮情勢は一段と緊迫化しているが、ここまではいずれも、円高は短期的に終息している。結局のところ、為替市場での円高への感応度を徐々に鈍らせている要因は、最悪の事態は回避されるであろうとの期待感である。4月にリスク回避姿勢が強まった局面でもそうであったが、武力衝突とならない限りは一過性のものであり、中長期的な相場の方向性を決めるのは米国の金融政策と景気情勢、および本邦の貿易・経常収支動向と考える。

    7月とは反対に8月米雇用統計は、市場参加者をやや失望させる内容となり、賃金データからは、「賃金上昇が加速して物価上昇」を想起させることは難しく、追加利上げは来年以降に先送りとの見方が強まりつつある。しかしながら、米長期金利(10年国債利回り)は2.1%台で下げ渋る展開が続いている。米長期金利が一段安となるかは、今月7日に開催されるECB理事会で、量的金融緩和政策からの出口へのスケジュールが明確に示されるか、19-20日のFOMCで米追加利上げについて、ハト派な見解が示されるか、がポイントとなろう。実際、8月ISM製造業景況指数は強い内容であり景気鈍化の兆候を示しておらず、その時期はもうしばらく先となるようにも思われる。

    また、『(ドル安について)貿易にはやや良い』とムニューシン米財務長官は発言(8月31日)しており、トランプ政権のドル安志向を改めて確認することとなった。ドル高をけん制する姿勢は、政権誕生時から続いているものであり、同政権下で大幅なドル高局面を迎えることは難しいであろう。

    秋のお彼岸が近づき、本邦輸出筋のドル売りもそろそろ一巡する時期となる。第4四半期は、輸入筋のドル買いや、海外企業の米国決算期末に向けた本国送金(ドル需要)が強まることとなるが、上述したドル売り材料との綱引きで、どちらが勝るかが注目される。筆者は本稿で年初から地合いとしての円高を述べているが、年内にドル安・円高が一段と強まる局面が到来すると予想している。引き続き、日経平均株価の下落に伴う、外国人投資家のヘッジはずしのドル売り・円買いには注意が必要である。

    予想レンジ:
    107円~112円(向こう1ヶ月程度)
    104円~114円(向こう半年程度)
  • 当内容は2017年9月5日現在の見解です。
執筆者:
株式会社じぶん銀行 ALM部長 島本薫

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