為替のきほん

(5)為替相場が動くワケ ~短・中期的に見ると?

為替相場は、長期的に見れば、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の良好な国の通貨が高くなる方向に動いていくと考えられますが、実際のマーケットではその他にもさまざまな要因が値動きに影響を与えています。

  • 2015年4月3日(金) 米国雇用統計発表時の米ドル/円相場

アメリカの雇用統計の発表の時には、為替が大きく変動することがあります。

為替の変動に関係するさまざまな要素

金利差

銀行預金や債券投資では、金利が高い方がより多くの収益を得ることができます。例えば、期間10年の国債が、日本とアメリカでそれぞれ年利2%で発行されていて、その後アメリカの国債の金利だけが3%に上昇したとすると、日本の投資家の中には持っている円を米ドルに替えて米国債を購入したくなる人が増えるはずです。

この場合は、米ドルの需要が高まり、米ドル高・円安の中期的な要因になります。

各種の経済指標

経済指標とは、各国政府や中央省庁、中央銀行などが定期的に公表している経済に関する統計を指します。特に主要国の経済指標は、短期的に為替相場を変動させる要因の一つです。

なかでもアメリカの経済指標は世界経済に与える影響が大きく、常に注目されています。近年重視されている指標の一つに「雇用統計」があります。雇用の状況が良ければ、失業率の低下や賃金の上昇を通して、アメリカ経済の拡大につながると予想されるため、統計の結果が予想を大きく上回ると、通常は米ドルが買われて円安になる傾向があります。 

アメリカの雇用統計は、原則として毎月第1金曜日に発表されます。

市場への介入

国の金融システムの中枢である中央銀行や各国政府が、為替相場を安定させることを目的に、外国為替市場で自国の通貨を売買することがあります。これは「市場介入」と呼ばれるもので、自国の通貨が高くなりすぎているような場合には、自国通貨を売って外貨を買うことで自国通貨を安くしようとし、反対に安くなりすぎている場合には、自国通貨を買って外貨を売ることで自国通貨を高くしようとします。その結果、為替相場は短期的に大きく変動することになります。

このほかにも、政変や戦争などが起きると、リスクを避けようとして関連する国の通貨が売られるでしょう。また、各国の長期国債の格付が下がったり、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)議長など、世界経済に対する影響力が大きい人物の発言などによっても、為替相場は大きく動くことがあります。

外国為替市場では、こういったさまざまな目的や思惑、要因のもとで取引が行われているため、長期的あるいは中期的な方向感はある程度予想できるとしても、短期的な値動きを予測するのはたいへん難しいといえるでしょう。

世界の出来事とドル/円相場の推移

[グラフ]

出所: 日銀時系列データよりFPアソシエイツ&コンサルティング株式会社が作成

為替相場の変動のメカニズムを一通りおさえたところで、次は外貨投資について考えてみたいと思います。

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筆者:神戸 孝(かんべ たかし)

早稲田大学法学部卒業。三菱銀行、日興證券を経て、99年FPアソシエイツ&コンサルティングを設立。日興證券勤務時代を併せるとFP歴は約25年、資産運用に強いFPの第一人者として評価が高い。日本FP協会理事、金融庁金融経済教育懇談会委員、同金融審議会専門委員などを歴任する。

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