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SPECIAL 02

プロジェクトストーリー

このスピード感、
この競争力こそじぶん銀行!
業界最短期間での
住宅ローン事業を立ち上げ

INTRODUCTION

イントロダクション

スマホ画面だけであらゆるリテールバンキング機能を完結させる──。じぶん銀行が一般の銀行と明らかに異なるのは、この基本命題を着実に実現させ、前例のない多様な金融サービスや商品を次々に展開している点にある。その先駆性と優位性は、2015年12月にリリースされた住宅ローンにも如実に示されている。金融業界において過去に例を見ないほどの超短期間で行われた新商品開発を振り返る。

PROFILE

プロフィール

01 低金利環境下での戦略判断
住宅ローン事業新規参入プロジェクトの立ち上げ

低金利環境下において、貸出し事業の強化は、じぶん銀行にとって重要な経営課題の一つだった。そこで2014年の8月、経営戦略として、大きな事業スケールが見込める住宅ローン事業参入の検討を開始する。しかし、住宅ローンは1件ごとの融資額が大きく、信用取引のリスクも高いうえ、多様で複雑な手続きをネット完結させるためのシステムも大規模な投資が必要である。そのため、一般の銀行であれば、住宅ローン事業参入には2年以上程度の準備期間を要するのが普通だ。ところがじぶん銀行は、この事業参入にあたって、検討期間3か月、システム開発を含む事業開始までの準備期間は1年1か月という驚くべきスケジュール目標を設定したのである。

一方、住宅ローン事業に初めて取り組むじぶん銀行には、当初、この事業の経験者が限られていた。中途採用による住宅ローン経験者を核に、行内の優秀な人材を集めてプロジェクトチームを立ち上げることになったのはそのためである。

後にプロジェクトにおいて事業企画や業務設計の全体を統括することになる藍田は、前職で住宅ローン事業を経験していた貴重な人材だった。藍田は、2014年夏の入社当時をこう振り返る。
「入社したその日のことです。経営企画部門の責任者から、住宅ローンに参入し、主要事業の一つに位置づけたいというお話しをうかがいました。なんとその2週間後には、住宅ローン事業に必要な業務体制や事業収支などについて資料をつくっていました(笑)」

その藍田が住宅ローン事業の予備的検討を始めてから1か月後、9月にはシステム開発の立場から青山がその検討に参画する。じぶん銀行の住宅ローンシステムはどうあるべきか、ここに業務設計とシステム設計の両面から精査・検討が開始されることになったのである。

02 リリースは1年後という至上命題
業務設計とシステム開発の一体化へ

銀行における新商品開発では、通常、時間をかけて業務要件を固めてからシステム構築に入る。しかし、先進的で新しい価値を世の中に提供することを常に目指しているじぶん銀行では、新商品開発においても前例の無い業務設計やシステム構築と、実現までのスピード感の両立が求められる。開発に与えられた時間がきわめて短いのはそのためである。設定されたリリース予定日は、2015年の12月。1年余りの短期間でプロジェクトを完遂させるためには、通常の銀行の事業開発とは異なるアプローチが不可欠だ。誰もがそう考えていた。

システム開発担当の青山は、当時のプロジェクトの状況についてこう話す。
「初期の検討段階から、業務担当とシステム担当とを分けずに、一体となってプロジェクトをスタートさせました。この体制こそが、短期間でじぶん銀行独自の新商品開発を実現できた最大の要因です」
予備検討期間においては、主に藍田がじぶん銀行として実現すべき住宅ローン業務の基礎要件を考え、同時に、青山が藍田から示される業務のシステム化を検討していく。この作業が、お互いの綿密なコミュニケーションによって一体的に行われたのである。

そして2014年の師走。住宅ローンのリリース予定日まであと1年。この頃からプロジェクトに参画したのが、赤坂と緑川の2人だ。赤坂は主に住宅ローンの契約関係全般や規約の作成などを担当するとともに、個別案件を審査する審査部の立ち上げに従事。緑川は不動産評価システムの導入や保険会社との折衝、コールセンターの構築など、インフラ整備を担うとともに、リリース後は住宅ローンセンターの統括を担当。2人の参画によって、業務設計から構築段階に無事移行し、事業立ち上げ準備がいよいよ本格化していった。

03 3つの戦略的差別化要件の柱
「ネット完結」をゼロベースから構築する苦心

低金利時代には、当然、住宅ローン市場の競争は激化する。後発の立場で競争を勝ち抜くためには、じぶん銀行ならではの商品性や独自サービスによって、競争力を強化することが何よりも肝心だ。そこでプロジェクトチームが考えたのは、業務設計とシステムで創意工夫を凝らすことで、次の3点を競争優位の柱として実現することだった。

(1)申し込みから契約・実行に至るまで、PC・スマホによるネット完結
(2)業界最速のスピード審査の実現
(3)auユーザー特典を梃にしたKDDI事業基盤の活用

住宅ローンでは、申込み・手続き・契約という大きく3つのステップでローンが実行される。これまでは「申込み」のネット対応は一般的だったが、手続きと契約まで含むネット対応となると、どの銀行も実現できていない。そこで、プロジェクトチームは、システム面、法務面、手続き面での検討を深めることによって、手続きと契約における「ネット完結」の実現を目指した。日本初の完全な「ネット完結型住宅ローン」への挑戦である。
例えば、本人確認や収入証明書類はスマホで撮ってネットで送るだけ、契約書の記入や捺印、収入印紙は一切不要、相談はコールセンターに電話すればよく、もちろん来店は不要。どれもネット銀行の中でも最先端を行くじぶん銀行ならではのチャレンジだ。

「業界最速のスピード審査の実現」においては、共同出資会社でもある三菱UFJ銀行の審査モデルをベースに、さまざまなアイデアを取り入れ、じぶん銀行流の業務フローを作り込んでいった。これによって、手続きの簡素化とスピード審査、いかにしてユーザー利便性を高め、同時に信用を見極めるかという課題がクリアとなり、市場競争力のあるサービスを生み出すことに成功。さらに、KDDIを出資会社とする強みを活かし、「au住宅ローンセット割」という、日本初の「携帯電話契約に基づく住宅ローン利用特典」を取り入れることによって、一層の競争力強化につなげていった。

しかし、業務構築に向けクリアすべき課題がまだ多く残されていた。例えば、「ネット完結」ひとつをとっても、ネット契約が法律的に強固であることの検証が必要である。契約関係全般を担当した赤坂は、この点には苦心した。
「お客さまが契約に同意されるやり取りをコールセンターで録音することにしたのですが、そのような独自の仕組み一つひとつが法契約上どのような意味を持つのか、弁護士事務所に何百回と足を運んで検討を重ねました。この類の作業は山積みとなりましたね」(赤坂)

一方、緑川は、お客さまによるネット手続きを、銀行側で完結させるために必要な住宅ローンセンターの業務内容を、文字通りゼロから構築しなければならなかった。
「最終的には、申込みからローンの実行に至るまで、お客さまの手続きをスムーズに回せる業務側の体制を目指しました。全体業務の中のどの部分がセンターのオペレーションとして必須なのか、システムで対応しきれない部分をいかに人手で補っていけるか。その整理は非常に大変で、かつ、その業務マニュアルを全てゼロから作らなければならなかったんです」(緑川)

04 スクラッチ開発か? パッケージシステムか?
そして住宅ローンはリリースされた

それだけではない。藍田が担当する業務内容の詳細設計と、青山が担当するシステム開発との間には、常に葛藤が生じていた。
「業務側が差別化要件として設計したものを、システム側が独自のシステムとして構築しないわけにはいきません。しかし、リリース期限が決められている以上、システム開発の立場から、差別化戦略につながらない業務であれば、そこは割り切ってパッケージシステム(他行・他社も利用している既存のシステム製品)でいかせてくださいと言わざるをえないこともあります」(青山)

業務設計側とシステム開発側のせめぎ合いは続いたが、最初から一体となってプロジェクトを進めてきた甲斐もあり、相互理解の上に、この葛藤は次第に鎮静していく。戦略的な差別化業務については全ての要素を実現するためスクラッチ開発(当行専用システムとしてゼロから開発)で対応し、例えば勘定管理のように差別化の必要がない業務にはパッケージシステムを導入するという方向で決着に向かったのである。

そして2015年12月、じぶん銀行は当初目指した期限通りに、住宅ローン事業に参入。プロジェクトメンバー4人の苦労が実り、日本初の「ネット完結型住宅ローン」という新商品は世に送り出された。

05 マイナス金利という追い風を活かす
Fin-Techというイノベーションに向かって

リリースして約2か月後、金融市場に驚くべきことが起こった。2016年1月29日、日本銀行がマイナス金利政策を発表したのである。藍田は当時を振り返って言う。
「マイナス金利政策の導入は誰も予想していなかったことです。発表当日から一気に申込みが殺到しました。マイナス金利に反応した潜在的なユーザーが、じぶん銀行住宅ローンの競争力に着目した結果です。事業計画の3倍という申し込み数には、私たちはもちろん、経営層も驚いていました」
1年半前から準備を進め、超短期間で住宅ローン事業への参入を果たしたじぶん銀行は、結果として、絶妙のタイミングで、マイナス金利という追い風を活かすことができたのである。

しかし一方で、膨れ上がった申込みに対して、住宅ローンセンターでは対処仕切れない事態が起こりつつあった。そこで、じぶん銀行は全行を挙げて各部署から人員を動員し、住宅ローン業務の支援に回ることになった。
「当初30人体制だったセンターは、3か月後には90人規模に増員。他部署の方にも応援をいただいて、本格的な体制が整うまでなんとか持たせたというまさに綱渡りでした」(緑川)
結果として、契約にまで至った件数も、計画の3倍という実績に跳ね上がっていた。

そして、住宅ローンはリリース後392日で融資実行額1,000億円を突破した。これはネット銀行最速の成長記録だ。今やじぶん銀行の中核事業に成長した住宅ローンがもたらす収益こそが、じぶん銀行がFin-Techというイノベーションに立ち向かうための、強固な推進エンジンとなりつつある。

しかし、と藍田は言い、青山たちメンバーもそれに同意する。
「率直に言って、まだ完成度を上げるべき課題がたくさん残されています。業務とシステムとが一体となって作り上げた新商品でも、さらなる進化を追求していく必要があるのです。それも、私たち最先端を走るネット銀行に課せられたミッションです」(藍田)

今回のようなスピード感を伴った大胆な商品開発や新規事業立ち上げは、おそらく他行では経験できないだろう。それがプロジェクトメンバーたちの正直な想いだ。リリース後、その新しい金融商品をともに育てていく醍醐味は、緊密に連携して住宅ローンセンターの業務をサポートしてきた多くの行員たちも共有している。その行内の共有感はまた、新たな銀行のカタチ、まだ見ぬ銀行サービス創造の糧となっていくだろう。じぶん銀行の挑戦は終わらない。

※所属部署は取材当時のものです。

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